木浪聖也のリフレーミング
【5月9日】
せっかくだから、きょうはこどもたちに向けて書いてよ。そう言われればどう書こうか。ちょっと難しい話になるかもしれないけれど、物事の多面性に触れてみるのもいいかもしれない。
今回のDeNA3連戦は「こどもまつり」と銘打ったシリーズだ。「こどもの夢を叶えたい」。阪神がそんなコンセプトで主催するカードだけど、この試合から「学び」を伝えるとすれば「リフレーミング」はどうだろう。
「物事の視点を変えること」の大切さである。
スタメンを見て、こどもたちは少し驚いたかもしれない。
あれ?大山選手は?
あれ?木浪選手がファースト?
球場へ来て、何の解説もなければ、頭に「?」マークが並んだかも…。
大山悠輔に代わり、木浪聖也が自身7年ぶりに一塁を守ったわけだけど、「日常=本職」でないポジションでスタメンを伝えられた木浪本人の心はどうだったと思う?まず、そんなことをこどもたちに聞いてみたい。学校でも日常とは異なる、スムーズにいかないことがある。そんなとき、きみたちならどうする?うかない顔をする?
木浪聖也なら?
「試合に出られるということが一番ですから。どこのポジションであっても思い切っていく。そういう、いい意味での開きなおりがきっちりできたと思います。9人の中にいるということは任されているということだと思いますし、思い切ってやろうということしか考えていませんでしたよ。どこのポジションであってもその気持ちは変わらないですし、準備の仕方が少し変わるだけで、マイナスなことはない。試合に出られることが大切なので」
クラブハウスへ引き揚げる通路で、虎番の囲みが解けた後に聞けば本人はそんなふうに答えた。
木浪はロッカールームに自前のファーストミットを持っている。でも、この日は同級生の大山悠輔に借りた。ご存じ、彼のファースト守備は初めてではない。社会人時代も守ったことがあるし、プロでも、数は少ないが何度かある。ただ、おそらく長く眠っていたミットだからなじませる時間がなかった…そんなふうに僕は想像する。
ゲーム前の練習では捕手陣にサードから一塁へ、ワンバン、ショーバン…たくさんの軌道のボールを投げてもらい、捕球練習に時間を割いていた。
ファーストプレーは初回、佐藤輝明からの送球がショートバウンドになったが、そんな愚直な準備が奏功した。二回の守備でも今度は輝からのワンバン送球を体全体を使って好捕した。フル出場で無失策。試合の後、木浪は大山に「ありがとう」と伝えたはずだ。
前向きな心はバットにも乗り移ったように思う。四回にヒットを放ち、六回には先制の犠飛をかっ飛ばした。
物事には多面性がある。イレギュラーに直面したときの考え方は人それぞれ。悪い方に着眼してしまうのが人間だけど、木浪はその反対側に目を向ける。「リフレーミング」に長ける男は強い。=敬称略=
