お前の魅力を消しちゃいかん
【5月19日】
ええ選手やないか。球児、どんどんえこひいきすりゃええんや!
ドラフト1位ルーキー立石正広がデビューした倉敷の夜、天国から懐かしい闘将の声が聞こえてきそうだ。
マスカットスタジアムの客席から歓声が注がれた立石のプレーについて、また、その詳報は立石をずっと見てきた虎番の原稿に委ねる。僕はゲームを追わず妄想を綴ってみたい。
まず、倉敷で黄金ルーキーがベールを脱いだことが感慨深い。指揮官藤川球児に感謝しながら、この地が生んだレジェンドを思い起こす。
もし、星野仙一が阪神の監督として立石を預かったらどうしていたか。
公然と、ひいきしたと思う。
そんなことない?
いろんな見方があって結構だけど、僕の想像はそうだ。
プロ野球に平等なんか要らん。「ひいき」があって当然の世界と星野は思っていた。分かりやすくいえば、星野竜の立浪和義がそうだった。本人らが否定しても、周囲からは「100%そう見えていた」と聞いた。
阪神では第1次政権の岡田彰布だってそうだ。就任初年度の04年は、前年3割を打ったショート藤本敦士をコンバートし、プロ実績ゼロのルーキーを開幕ショートに抜擢。誰がどう見たって鳥谷敬を「ひいき」していたのだ。
今になって述懐すれば、星野のひいきも、岡田のそれも、正しかった。
競争は要らない。試さなくても判る素材は毎年出てくるものではない。だから、特別扱いのレールを敷く。立浪も鳥谷も恩師の敷いたそれに応え、日本球界を背負うレジェンドになった。
ならば、立石正広はどうか。
藤川球児は「今後を担う素晴らしい選手の第一歩」と語り、満を持して倉敷に呼んだ。球児の評価はこの月曜に語ったひと言がすべてだと思う。
直近のファーム・リーグ、米子での広島戦でヒット、ホームランを放ったことも当然加味された昇格…だろうとこっちは思っていたが、ファームでの成績は「全然関係ないです」と球児は語った。つまり、極端にいえば、全打席三振だろうと立石は倉敷に来ることになっていたのだ。
立石は年明けの新人合同自主トレで右脚の肉離れを発症し、その後も左手首や右ハムストリングスを痛めてデビューが遅れた。見る者はヤキモキしたが、指揮官が揺れることはなかった。ファーム監督の平田勝男と青写真を共有し、粛々とその舞台を整えていたということだ。立石は「球児ドラフト」の目玉であり、「ひいき」するべき素材である。懸念があるとすれば、ひとつ。「健康」であるかどうか。いうまでもなく故障の連鎖は避けたい。とはいえ、1軍に来た以上、制限はない。
週末、立石のカウントダウンを見に米子へ行ってきた。試合になれば自らチーム打撃も敢行したが、平田は立石をたしなめていた。
「そういう気持ちは大事だけど、お前の魅力を消しちゃいかん」
立石正広の魅力を存分に味わえるシーズンが幕を開けた。=敬称略=
