【野球】浦和実をセンバツ4強に導いた辻川監督の“指導法” 就任38年目で初の大舞台に
春の甲子園に浦和実(埼玉)が“旋風”を巻き起こした。エース左腕・石戸颯汰投手(3年)を中心に、打線の勝負強さも光って4強進出。初出場で、他に甲子園優勝経験校しかいない準決勝の舞台まで進んだ。率いる辻川正彦監督(59)は情熱的な性格で部員に慕われる。ベンチでも見せる等身大の姿が、ナインを奮起させ団結力を生んだ。
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辻川監督は1988年から同校野球部の指揮を執り、就任38年目で初の大舞台にたどり着いた。「とにかく熱い人なんですよ。入学したときは怖い、が第一印象だったけど、愛情がある」と主将の小野蓮外野手(3年)。聖地でも熱く、前のめりに采配を振るった。
ただ、試合中には祈るように「頼む。勝たせてくれ」とベンチでつぶやくこともしばしばある。小野主将は、そんな指揮官の姿を「“懇願”型みたいな(笑)。監督自身がおびえている。ただ、それを素直に出してくれるので、選手はある意味リラックスできます」と、力を発揮できる理由だと語っていた。
指導者の性格、言動によっては選手が萎縮することもあるが、浦和実ナインに限ってはあまり見られない。小野が口にした通り、辻川監督にも怖さは確かにある。それでも勝利への執念のあまり、かえって弱々しくなる等身大の姿が、ナインを奮起させる。
勝利に対する執念は、同じ埼玉のある名将に影響を受けたこともある。その名将とは浦和学院前監督の森士氏(60)。「森さんとはすごく仲が悪かった」と話すように、元々は二人の関係は良好ではなかったという。ただ、辻川監督は埼玉県監督会の幹事を任された時期があり「そうなっちゃったら、しゃべらざるを得ない。今は仲良くなったかな」と交流のきっかけができた。
現ロッテの小島和哉投手を擁する浦和学院が13年センバツで優勝した後に、森監督から指導のノウハウを聞いた。名門校の指導法は想像以上に厳しい。ウオーミングアップ一つでも手を抜いた走りをすればやり直し。声が出ていなければやり直し。「全ては生徒のため」と妥協しない森監督の姿勢に、辻川監督は「森さんの執念って半端ない」と感銘を受けた。
だが、いざ浦和実に同様の指導を試みても「野球にならない」と半日で断念した。今は「自分のやり方で」と辻川監督なりに熱く指導する。非情になりすぎず、時にはベンチで勝利を懇願する姿がナインの団結力を生み、今春の躍進につながったのかもしれない。(デイリースポーツ・中谷 大志)
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