J1広島 開幕戦ドローも東、野上の両サイドバックに収穫
「明治生命J1、広島1-1仙台」(2月27日、エディオンスタジアム広島)
広島に乗り込んできた少数精鋭の仙台サポーターが、思わず歓喜を叫んだ。
89分、赤崎秀平の同点ゴール。数的不利の状況でリードを許し、敗戦必至の様相だったが、GKヤクブ・スウォビィクを中心に全員で守り抜いた。最後まで諦めなかった選手たちをたたえたい。
仙台の番記者であれば興奮を抑えつつ、こんな原稿を書いてしまいそうな2月27日の開幕戦。J1広島にとっては屈辱的な引き分けであり、城福浩監督も「勝たないといけない試合」と記者会見で唇をかんだ。
ただ、時間をおいて考えると、成果も手にした試合でもあった。その最たるものがサイドバックである。
これまで3バックで戦ってきた広島にとって、サイドバックは存在しなかったポジション。新システムである4バックのサイドバックが機能するか否かは、大きな課題だった。
仙台戦はサイドバックには左に東俊希、右には野上結貴が入った。アタッカーの東と本来はセンターバックである野上の同時起用は、指揮官が目指す「左右非対称」の表れだ。
左の東は攻撃にシフトし、何度もゴール近くに現れた。86分、柏好文のクロスに飛び込んだシーンは圧巻。GKが名手・スウォビィクでなかったらネットを揺らした確率は高い。
一方、野上の武器は正確なキックだ。後半アディショナルタイム、鮎川峻にピタリと合わせて決定機をつくったクロスは正確無比。中盤にポジションをとってゲームメイクに参加する「偽サイドバック」的なプレーも見せ、東とは違った攻撃力の高さを示した。
相手が10人でずっと引いて守っていたこともあり、4バックの守備の現在地は不明。ただ、少なくとも攻撃での可能性は十分に見せつけたと言っていい。
数的優位での勝点1はとてつもなく悔しい。だが下を向いている暇はないし、まだ始まったばかり。課題と共に収穫も抽出し、次に向かうだけ。収穫を増幅させ修正を繰り返す。リーグ戦とはその繰り返しである。
(紫熊倶楽部・中野和也)