【渡邉寧久の演芸沼へようこそ】龍玉の落語にも相通じる主水の流儀
夏。怪談噺が、落語家や講談師の飯の種になる季節だが、実際のところは「骨が折れてね。全然得にならない」。落語家の蜃気楼龍玉(49)は、苦笑いでそう本音を漏らす。
来月17日~19日、三夜連続で「怪談 牡丹燈籠」(東京・国立演芸場)を通し口演する。2018年、20年に続く再々演。一夜2時間から2時間半(休憩含む)を一人でしゃべる。
落語作家・本田久作さん脚色の台本は400字詰めの原稿用紙で200ページほどもあり、「(持ち時間の短い)寄席でかけることもできませんので、一発勝負の本番です。夏の公演が終わった後も、どこかでしゃべる機会もありませんので、商売にもならない」。
にもかかわらず、「牡丹燈籠」にひかれるのは、登場人物の「悪党」への共感から。三遊亭円朝の「真景累ヶ淵」や近松門左衛門の「女殺油地獄」などに登場する「今の世の中にもいそうですもんね」という悪のぬかるみにはまり生きる男や女を、端正なしゃべりで紡ぎ出す。
話芸の体幹になっているのは、子どものころにのめりこんだテレビ時代劇「必殺仕事人」シリーズだという。
「理不尽な悪を裁くというあのカタルシスには、ぐっとくる感覚がある。(俳優)藤田まことさんが演じる中村主水のかっこよさには、かなり影響を受けました。あとは勝新さん(俳優の勝新太郎)の殺陣のシーンの仕種、あれも参考にしたりします」
昼行燈で、すべてにおいてやり過ぎない主水の流儀は、龍玉の落語にも相通じる部分がある。
「怪談 牡丹燈籠」の主催会社「いがぐみ」の五十嵐秋子社長は「一人芝居としてやりがちなところを、龍玉さんはやり過ぎない。そこが聞きどころですね」と、太鼓判を押す。
江戸落語界の巨匠、五街道雲助(74)に1997年に弟子入りし、今年で25年。
文化庁芸術祭大衆芸能部門新人賞(2014年)、国立演芸場「花形演芸大賞」大賞(16年)を受賞するなど、中堅真打の一角として、着実に自分の色を出している。
「師匠(=雲助)はオールラウンダー。滑稽噺も人情噺も怪談噺もなんでも来い。師匠の芸を弟子3人(桃月庵白酒、隅田川馬石、龍玉)で分割できればいいんですけどね」(演芸評論家)
◆渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう)新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクなどを経て独立。文化庁芸術祭・芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。
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