ドラフト制後、阪神初の国立大出身選手が地方テレビ局に転身した理由 きっかけは阪神入団時の密着特番
阪神から2019年度育成ドラフト2位で指名された、元プロ野球選手の奥山皓太さん(26)は現在、山梨放送で社会部の記者として第二の人生を送っている。ドラフト制導入後、阪神では初となる国立大学出身選手で、静岡大からプロの門をたたいた奥山さんはなぜ、テレビ局への道に転身したのか。その裏側に迫った。
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かつてタテジマのユニホームに身を包みバットを握っていた奥山さんは、今はテレビ局の記者としてマイクを握る。画面越しから、情報を伝える立場となった。
「まだ1年目で数自体はそんなに多くないんですけど、大きな事件や事故があった場合には、実際にリアルタイムで現場に行って撮影したり、取材でお話を伺いまして、原稿を作成したり、ニュースに反映するような仕事をしています」
社会部所属の奥山さんは警察や消防などに連絡するなどの取材に加え、カメラでの撮影や原稿執筆、さらに映像の編集作業など業務は多岐にわたる。そもそも、なぜ放送局で第二の人生をスタートさせたかったのか。きっかけがあった。
国立大学の静岡大から、19年育成ドラフト2位で外野手として阪神に入団。その際、密着の特番を制作してくれたのが所属する山梨放送だった。「大学やプロ生活で地元の山梨を離れる期間が長く、帰ってきた時に変化を実感したことが多かったんです。報道の機関で分かりやすく伝える立場にチャレンジしたいと思いました」と入社した理由を明かす。
阪神在籍期間はわずか2年。20年、1年目の安芸の春季キャンプで右膝裏を痛めた影響もあり、出だしでつまずいた。完全燃焼とは言えない。それでもプロの経験は「自分の財産」と言い切る。
忘れられない思い出がある。2年目に経験した21年のファーム日本選手権だ。イースタン・ロッテ戦に代走で出場し、九回に同点のホームを踏んだ。チームは日本一となり「少しでも貢献と言ったら大げさですけど、日本一のメンバーになれたことは一番、印象に残っています」と、うれしい記憶が脳裏には刻まれている。
ドラフト同期は西純や及川、そして同じ育成入団から支配下登録を勝ち取った小野寺らがいる。「お世話になったので、今もタイガースを応援しています。寮生活や試合で過ごした仲間の活躍はうれしいです。引退した身ですが、刺激をもらっています」。今年は大学の後輩で広島・佐藤が育成入団から支配下登録を勝ち取り「後輩を見て頑張ろうという気持ちの高まりはありますね」と大きなモチベーションになっている。
現役時代は思うような成績を残せなかったが、鳴尾浜や甲子園で応援してくれた虎党に感謝は尽きない。地方の放送局ではあるものの、これからは画面越しに元気な姿を届けていく。
「温かい手紙や応援メッセージをくださった。リポートで顔出しをした際は反響がありました。露出は多くはないと思いますが、本当にガムシャラに頑張って、多くの方に頑張っている姿を見てもらいたいです」