「自宅の耐震に不安がある」人多数…その一方で「旧耐震基準」に住む人の8割強が「特に対策はしていない」

国土交通省が2020年に発表した「住宅・建築物の耐震化率の 推計方法及び目標について」によると、2018年時点で全国の戸建て住宅の耐震化率は約81%で、約560万戸が「耐震性不十分」と推計されているそうです。2024年1月に起きた能登半島地震でも多くの建物の倒壊が相次いだなか、耐震基準を満たした建物が倒壊を免れたことが分かってきました。

平松建築株式会社(静岡県磐田市)が、このほど実施した「大地震に対しての自宅の不安と対策」についての調査によると、2000年6月以降の「2000年基準」で建てられた住宅に住む人の半数以上が「大地震に対する不安がある」と回答しました。その一方で、大地震への対策については、「旧耐震基準」の住宅に住む人で8割強、「2000年基準」の住宅に住む人でも半数以上が「特に何もしていない」ことが分かりました。

調査は、戸建て住宅(持ち家)に住む全国の25歳以上65歳未満の男女1000人を対象として、2024年2月にインターネットで実施されました。

まず、「自宅の構造」について聞いたところ、「木造」(76.2%)が最も多く、次いで「鉄骨造」(19.4%)、「コンクリート造」(4.4%)と続きました。

日本の住まいには、建築基準法で定められた耐震基準があり、1981年6月以前の「旧耐震基準」と1981年6月以降の「新耐震基準」、2000年6月以降の「2000年基準」の大きく3つの時期に分類されています。

そこで、自宅の構造が「木造」と回答した762人に「自宅はいつ建てられましたか」と尋ねたところ、圧倒的に「2000年以降」(71.7%)が多くなり、「1981年以降」(15.2%)、「1981年以前」(6.7%)や「わからない」(6.4%)は少数派となりました。

次に、大地震による倒壊などの「自宅に対する不安」について、「とても不安」「やや不安」と答えた人の割合をみると、「旧耐震基準」(1981年以前)」の住宅に住む人で88.2%、「新耐震基準」(1981年以降)の住宅に住む人で71.5%、「2000年基準」(2000年以降)の住宅に住む人で54.6%という結果になり、古い住宅ほど不安度も高い結果となりました。

その一方で、「大地震に対する対策」については、「旧耐震基準」(1981年以前)」の住宅に住む人の84.4%、「新耐震基準」(1981年以降)の住宅に住む人の76.2%、「2000年基準」(2000年以降)の住宅に住む人の58.4%が「特に何もしていない」と回答し、多くの人が大地震に対して不安を感じているものの、何も対策をしていないことが分かりました。

他方で、「2000年基準」(2000年以降)の住宅に住む人では、「耐震性に長けている(耐震等級3)家に住んでいる」(31.9%)、「耐震診断をした」(10.1%)など、何かしらの対策をしている人が約4割となりました。

   ◇  ◇

【出典】

▽平松建築株式会社 調べ

■地震で倒壊してしまう家の特徴と家づくりにおける対策

なお、同調査では「地震で倒壊してしまう家の特徴と家づくりにおける対策」について以下のように解説しています。

「耐震基準」とは、建築する建物に対して、国が定めた「最低限満たすべき地震の耐性基準」のことで、1981年6月以前の「旧耐震基準」と1981年6月以降の「新耐震基準」、2000年6月以降の「2000年基準」の大きく3つの時期に分類されます。

2000年基準は、阪神淡路大震災を受けて制定された基準で、2000年から耐震性の指標として、「耐震等級」も定められました。耐震等級は「1」から「3」まで3段階に分けて表されます。「1」は、建築基準法レベルの耐震性能を満たす水準で、「2」は「1」の基準の1.25倍、「3」は「1」の基準の1.5倍の強さになります。

「熊本地震における木造住宅の建築時期別損傷比率」(建築学会によって実施された益城町中心部における調査より)(※)をみると、旧耐震基準の木造住宅の無被害は僅か5.1%しかありません。2000年基準の木造住宅でも無被害は61.4%。家を買うのならば、地震に対するリスクがない、心配する必要がないというレベルで建てた家でなければなりません。

日本の建築基準法を守っていれば安心ということはなく、耐震等級3は必須条件ですが、耐震等級3でも盤石ではありません。中破や小破の損傷被害で外から見たら大丈夫そうでも、次に地震が来たら危ないです。揺れが徐々に大きくなっていくとともに、釘が抜けていったり、接合部が緩くなってきたりして、どんどん家の耐力が低下していきます。

そのためにも、繰り返しの地震に強い家づくりが重要です。耐力壁を柱の中に納める「真壁納め」の家が強いです。

(※)発行元:一般社団法人くまもと型住宅生産者連合会

また、気象庁の「震度データベース」によると、1990年~2023年の間に震度5弱以上の地震は398回も起こっています。平均すると1年間で11.7回も震度5弱以上の地震が起こっていることになります。日本に住んでいる以上、どこに住んでいても地震のリスクがあるため、耐震性の高い家を作る必要があると思います。

これだけ地震が多い国なのに、耐震等級の低い家がつくられるのには、建築基準法の「4号特例(※)」が原因の一つになっていると思います。4号特例とは、「2階建てまたは延べ面積500平米以内の小規模な木造建築物は、構造計算書を添付しなくても良い」という特例で、構造審査の省略が認められています。そのため、倒壊する可能性が高くなり、”建築基準法に則った家づくりをしていれば安心”ではないということになります。

2025年の法改正で、2階建て以上または延べ面積200平米超の木造建築物は「新2号建築物」となり、構造計算書の添付が義務化されますが、耐震等級3に加え、「許容応力度計算」という最もレベルの高い構造計算もしっかり行うことが大事です。

(※)2025年4月施行予定の改正建築基準法で、4号特例は縮小される。

【これから家を建てる人の対策】

▽耐震等級3

▽許容応力度計算

▽施工品質の確保(※)

(※)実際に、施工で設計当初通りに施工されているか?細かい釘やピンが打ってあるか?構造の金物がきちんと付いているか?などをしっかりと施工の管理監査をして、確実な家づくりをしていくこと。

【既に家を建てた人の対策】

既に家を建てた人は、きちんと対策を考える必要があります。まず、自宅がどれくらいの強さなのか現状を把握するために耐震診断をし、その上で耐震補強すると良いでしょう。耐震診断や耐震補強などは、多くの自治体で補助事業(補助金制度)が実施されています。お住まいの地域の工務店や自治体に問い合わせてみてください。

【地震耐震補強】

地震耐震補強の方法は、大きく2つあります。

1つ目は、建物を軽くすることです。瓦が重たいと建物に負担がかかり、倒壊する原因の1つにもなるため、屋根の軽量化が必要です。まずは、瓦などの重い屋根は、ガルバリウム鋼板の屋根に葺き替えをお勧めします。屋根が軽くなると、建物の重心が下がるため、地震耐震補強になります。

また、耐震補強をした後にリフォームなどで太陽光発電のソーラーパネルを後付けした場合は、元々の想定よりも屋根が重くなっているため、耐震性上で問題が出る可能性もあります。注意してください。

2つ目は、外壁や基礎を補強することです。1981年6月以降の住宅の基礎コンクリートの中には鉄筋を入れることが義務付けたれましたが、それ以前の住宅では任意だったため、鉄筋が入っていない「無筋コンクリート」の家が多くあります。

鉄筋が入っていないことで基礎の強度は低く、地震などの力に対する耐久性も弱いです。このような無筋コンクリートの基礎の補強は、増し打ちという方法でできます。また、基礎の周囲に炭素繊維シートを巻きつける耐震補強方法もあります。

その他にも、横揺れの耐震補強として筋交いをしっかり入れるまたは、真壁納めなどをすると、繰り返しの揺れにとても強くなります。但し、現場の状況や予算などで補強方法も変わってくるため、建物の精密診断をした上で、地元の工務店さんなどに相談しながら進めていくと良いでしょう。

関連ニュース

ライフ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス