海苔の食べ過ぎに注意 ヨウ素の過剰摂取で重要なホルモンの合成を妨げる
「海苔(ノリ)」は、おむすび、巻き寿司に、薬味、味噌汁、パスタまで、私たちの食生活に欠かせない食材です。そもそも海の中で養殖されたスサビノリやアサクサノリなどの海藻を乾燥させた食品で、海の野菜と呼ばれるほど豊富な栄養素を含んでいます。
焼き海苔1枚は20センチメートル四方で3グラム。含まれている栄養素は、ビタミンB12・ヨウ素・ビタミンK・葉酸などです。とりわけビタミンB12が豊富で、その主な働きは、赤血球の生成、脳神経系の保持、眼精疲労、肩こり、神経痛の改善にも効果があります。ほかにも基礎代謝の促進・成長促進・骨密度の維持・動脈硬化や心臓病の予防・たんぱく質や細胞合成を助ける、などの健康増進作用があります。
ただし海苔の食べ過ぎにはデメリットもあります。ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料となる栄養素ですが、摂取過剰は甲状腺ホルモンの合成を妨げ、甲状腺機能低下症をきたします。甲状腺機能低下症の症状は、無気力・肌の乾燥・むくみ・体重増加・便秘などですから要注意です。少しくらい海苔を食べ過ぎてもここまでにはなりませんが、昆布・ひじき・わかめなどと一緒に食べると、結果的にヨウ素の摂取過剰になります。
海苔には食物繊維も含まれています。食物繊維は水に溶けやすい水溶性食物繊維と、溶けにくい不溶性食物繊維がありますが、海苔に含まれるのは水溶性食物繊維で、便をやわらかくする働きも持っていますが、食べすぎると下痢になります。ビタミンB12の成人推奨量は、焼き海苔に換算すると1.5枚、ヨウ素は約2枚で満たせます。ビタミンB12は水溶性なので、食べ過ぎても尿で排泄され、心配いりませんが、海苔類の食べ過ぎによるヨウ素の過剰摂取は、実は要注意なのです。
◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。