小田穂乃実の実になる話⑮馬運車ってな~に?
競馬場や放牧先に馬を運ぶ「馬運車」。競馬場までの移動で、大幅に体重が減る馬もいるほど輸送はレースの結果に関わる重要なもの。競馬場の近くに住んでいる私は、幼少期道ばたで急に現れた馬運車の迫力、大きさに目がテンになりました。中はどうなっているのか?馬はどのように安全に運ばれているのか?外から見ているだけでは、謎に包まれている馬運車。『竹中運送』の方々にご協力いただき、特別に馬運車の中を見せていただきました。
馬運車は大きく分けて、運転席のある人が乗るスペースと、馬が乗る馬房に分かれています。馬運車の仕組みについて、ドライバーの石川さんにお話をお伺いしました。
「前に2頭、後ろに2頭の2列で進行方向を向いて積まれ、基本的に一度に4頭まで運ぶことができます。1頭ずつ仕切られたスペースに入り、引き手でつながれます。狭い枠が嫌な馬の場合は固定する棒を調整し、少しスペースを広げてあげます」。馬が決められた場所に入ると、しっかりドアを閉めます。馬が前に進んで行かないように、横棒があり、周りはクッションの壁になっているので、けがをしないような安全な作りになっています。馬は乗り込むと、長時間の移動距離中は立ちっぱなし。極力ストレスなく、快適に過ごせるような設備になっているのですね。
そして、暑さに弱い馬が体長を崩すことのないように、欠かせないのが“エアコン”。馬の体温は人間よりも約1度高く、平熱が37・5度~38度くらいだそうです。「馬は暑さに弱いから、夏場も必ず涼しく保たないといけません。暑いと、イレ込んでしまう馬もいます。ただ、顔に直接風が当たると嫌がるので、そこは気をつけなければいけません」と、細かな調整が大切です。
馬が横に並んで乗るスペースの真ん中に、カーテンを発見。「これは隣に馬がいると気になったり、馬っ気を出してしまったりする馬の場合に遮り、横の馬が見えないようにするためのものです」。他にも、牡馬と牝馬を同時に運ぶ際は、牝馬を見て牡馬が興奮してしまうことのないように、必ず牡馬を前に、そして牝馬を後ろに乗せるようです。
厩務員さんは運転席のある前のスペースに乗っていますが、馬が暴れてしまったり、様子がおかしかったりした時、すぐに駆けつけられるようにカメラが設置されています。運転席にあるモニターで、常に馬の状態をチェック。もしも不安なことがあったり、異変を感じたりした場合は、馬の横に付きっきりで何時間も移動することもあるのだとか。馬房と運転席側をつなぐドアがあり、そこからすぐに馬房に駆けつけることができます。落ち着かない馬の場合は、馬房の天井についているブルーライトをつけると、落ち着く馬もいるそうです。輸送中は馬の前にカイバがつるされてありますが、札幌などの長い輸送の場合、このドアからカイバを何度か入れ直しに行きます。
さて、気になる運転席側はどのような作りになっているのでしょうか。まず入らせていただいて最初に出てきた言葉は、「広っ!」でした。私は普通に座席がいくつか並んでいるのかな、と思っていましたが、広々と寝転がることができるスペースが広がっていました。天井側にも2つのベッドがついていました。冷蔵庫の中にはキンキンに冷えた飲み物が入っていて、かなり快適な空間のようです。
普段、馬と一緒に乗る担当の方々は馬運車の中で、休息を取ったり、携帯でドラマを見たり、とそれぞれ好きなことをして過ごされています。「もし担当の方が寝ていらっしゃる時に、何か馬に異変があるのをモニターで見つけたら、運転席から叫んで担当の方を起こしますね(笑)」と、運転手も馬を安全に送り届けるために一丸となります。
最後に、私も一緒に乗せていただきましたが、とても丁寧な運転で、揺れをほとんど感じない!馬運車には、オートマ車はなく、絶対にマニュアル車だそうです。これは、ミッションじゃないと、なめらかに発進できないからです。
約20トンもある車を運転する方の重圧は計り知れないですよね…。「これだけ大きいので、自分が感じる重力に合わせて運転しています。段差は手前で減速したり、車間は絶対余裕を持ってあけたり、とにかく安全に。特にカーブは注意しますね。勢い良くカーブしてしまうと、馬が鉄を踏んでしまい、落鉄につながってしまいます」と、細心の注意を払って運転されています。
乗せていただいている時に、他の会社の馬運車とすれ違いましたが、手を挙げてあいさつされていました。「馬運車とすれ違う時は、どこの会社とかは関係なく、絶対に手を挙げます」。同じ使命を背負い、馬の命を預かっているもの同士、心はつながっているのですね。
ちなみに、竹中運送の馬運車は1台約6000万円。オーダーメードでこだわりを持って作られています。馬をレースまで無事に送り届けるという、とても重要な役割を果たしている馬運車。安全に運ぶための工夫や、関わっている方の思いがたくさん詰まっているのですね。
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