松坂から学んだスカウト活動の教訓…高校時代の評価と予想を凌駕した活躍

 中日で見事に復活した姿を見せた松坂大輔は、高校野球史上に残る投手だった。横浜のエースとして2年秋の新チームから勝ち続け、無敗で甲子園春夏連覇を達成。夏の決勝ではノーヒットノーランの劇的な優勝を飾ったスターだが、現在AbemaTV東京六大学野球中継の解説を担当している元阪神の菊地敏幸スカウトは、自分の予想を大きく覆すプロでの活躍に、今でも改めて松坂のすごさを感じている。

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 1年秋から名門・横浜のエースとしてマウンドに立っていた松坂だが、2年夏の神奈川大会準決勝・横浜商戦で暴投を犯してサヨナラ負けを喫しました。この時、松坂を見ていて思ったのは、上半身が強すぎる感じのフォームだなと。下半身を使わずに上半身の力だけで投げるイメージでした。

 ボール自体も速いというより、ズドーンと強いという印象がありました。とにかくフォームは独特で、リリース後の右足が引きずっている感じも気になっていました。そのため個人的にはあまりいい印象がなく、それほど評価は高くなかったのです。

 実は甲子園春夏連覇を達成した直後、ある雑誌から、松坂がプロでどれぐらい活躍するかという取材を受けた時、私は「5勝くらいだろう」と答えました。今となっては恥ずかしい予想ですが、あの投げ方だとプロに入ったらすぐに故障してしまうだろうと思っていたのです。

 プロでの活躍は周知のとおりです。いきなりプロ1年目で16勝を挙げ、メジャーでも活躍。日本に戻ってきてソフトバンクでは苦しんでいましたが、現在は中日で復活勝利を挙げるなど、再び輝きを取り戻そうとしています。

 ただ、阪神が松坂をドラフト会議で1位指名しなかったのは、私の評価とは関係ありません。詳細は言えないのですが、球団の諸事情で松坂の指名は早い段階で見送っていました。そのため、私としては松坂を獲得できなくて悔しいという思いはありません。しかし、投球フォームで投手の評価を決めるものではないということは、松坂で勉強させてもらいました。その後の私のスカウト活動に影響した投手であるのは間違いありません。

 ◆菊地敏幸(きくち・としゆき)1950年生まれ。法政二から芝浦工大を経てリッカー。ポジションは捕手。89年にスカウトして阪神入団。藪、井川、鳥谷らを担当。13年限りで退団した。今年から「AbemaTV」で東京六大学野球リーグの解説を担当。

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