今井貞美が見る 松山と石川の差【下】
「米在住レッスンプロが考える松山と石川の差」=下=
なぜチップ&ランが安全か?それは、グリーンのアンジュレーションに対して強い弾道になるので、パットにたとえると強めに狙うストロークになり、チップインも可能。入らなかったとしても、方向性が強めの薄目なので次のパットがサイドにぶれる確率が低いということは、スライスやフックラインの難しいパットを残す確率が減る。
ゴルフは“いかにリスクを伴わないショット”で2打先まで想定してコースマネジメントをするかというスポーツです。石川は、ラフからのアプローチショットの練習も足りないのでは?ラフからのアプローチ練習は時間がどんなにあっても足りないくらいです。
そういえば、生徒の小西健太(東北福祉大)が米国に来た時、ラフからのアプローチを徹底的に練習させました。彼は8時間もアプローチ練習場でひたすらやっていました。努力する生徒は伸びる。しかし、その後、年中試合があり、今の彼に必要な寄せ、パット、スライス、フックボールなどのレッスンができないことが一番残念です。あの集中力があれば、先輩の松山に追いつけ追い越せで頑張れるのですが…。
石川と同じ門下生で現在、私の生徒でもある絵野剛吏はやはり石川同様の傾向があります。ショットの方向性が良いのでパーオンすれば素晴らしいスコアが出せます。一昨年はボストンで開催された全米アマ本戦に参加しました。が、ロボットのようにパーオンをいつもできる人はいないのですから、寄せやパットの重要性を理解することが大切です。
ショットの調子が悪い時はスコアに表れます。米ツアープロの平均パーオン率は69%で平均スコア71・457。パー5でのバーディーをできるだけ増やすことがまず目標。刻んでこれなら絶対ワンパット圏内という距離を作り、ベタピンでバーディーもまた、スマートなコースマネジメントだと思うのです。100ヤード以内の、これなら絶対ワンパット圏内に付けられる!という自信のアプローチの距離を持ってほしいものです。
松山、石川がそろって不得意なのがパットです。◆1・5ヤード以内パット=石川13年94・17%(176位)、14年95・68%(137位)、15年96・58%(95位)。これに対し松山は13年97・45%(アマ)、14年95・42%(152位)、15年97・69%(53位)です。
2人ともランクが良くありませんが、ストロークがパチンと打つゴルファーが多い日本。たぶんグリーンが、パチンと打つストロークの方が効果を発揮するのでしょうか。アメリカは広い範囲でグリーンの芝も違っていますが、傾向的にかなり速めなので、打つというよりフォローストロークが主流です。
しかしながら、ゴルフはどんな打ち方でも結果が良ければ良し!なのです。良い人は黙って続けること。悪ければ、何とかしないといけません。人はそれぞれ肉体的、性格、メンタルなど個性が違うわけですから、その人に合ったベストなショット、ドリルを探していくことが上達への近道です。
世界を舞台に松山、石川両選手、そしてそれに続けと他のゴルファーたちが元気になってくれたらと思います。ゴルフ指導はメカニカルなことも大切ですが問題を指摘することは簡単ですがそれをどのようにして改善させるか?だれもが自分の問題点を分かっているのに、どの問題から手を付けていくのか?どこから始めるのか?どのようにするのか?松山が言ったようにゴルフ上達はエンドレスです。満点はあり得ないからです!その意気込みで世界1位を目指して下さい。応援しています!!
貴方はそれがなぜ問題なのか?を納得すること。
貴方に合った効果的なドリルで改善、そして上達。
(Sadami USLPGA Class A Instructor)=おわり=
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★今井貞美(いまい・さだみ)1950年6月8日、東京都生まれ。84年に夫の仕事でカナダに渡り、93年から米サンディエゴで生活。45歳の時にゴルフの魅力を知り、それからわずか3年半でPGAティーチング・プロテストに合格。3年間PGAに在籍した後、LPGAのティーチングプロに移籍。米国内をはじめ日本でも指導を行い、小西健太(東北福祉大)らを育てている。