野口彩未(2)パーオン率より寄せから
4月24日、フジサンケイレディスで、出身地・熊本への想いが実力以上の結果となり、6戦連続予選落ちから、野口プロは忘れられないLPGAツアー初の予選突破を果たしました。自己ベストスコア68を出し、35位となりました。
それから約1カ月…。92位タイCut(予選落ち)、初メジャーは1打及ばず67位タイでまたCut。しかし、先週の中京テレビ・ブリヂストンレディスは52位タイで2度目の予選突破と、少しずつですが明らかに上達しています。
どん尻から「いつか見てろよ!」という意地と悔しさをパワーに練習に励み、良い結果が出た時には自信につながり、ガ然やる気になったり…。いずれにしても、上昇しかない位置にいるゴルファーは、毎試合、上位争いしているレベルの選手とは違い、何を練習すれば良いか分かりやすいので、ストレスも上位グループより少ないのです。
上位グループと予選落ちグループの差は、パーオン率、アプローチの寄り方、パット数、ダボの数、ペナルティーの数、すべてに差がありますが、飛距離に違いはありません。しかし、方向が乱れるのでペナルティーが加わったり、寄せが頻繁になるのですが、これが寄らない。そしてパットが入らないのは、アプローチが近くに寄らないので入る距離のパットにならない。そして、それがどれだけ大切な技術なのかよく理解していない。それが分かる人は上位で戦う“うまい選手”なのです。
それが分からない人は、残念なことにアマチュアを含めパーオン率を高めることに必死でフルショットの練習ばかり積んでいるし、フルショットの調子ばかり気にしています。
どこかのコラムで松山英樹選手が実に正しいことを言っています。「アメリカPGAツアーの選手は100ヤード以内のアプローチショットがうまい。調子が悪くても寄せやパットでスコアをしっかりまとめてくる。フルショットの調子の良し悪しはあっても、アプローチは調子の良し悪しはないのでその辺の差がスコアに出てくる」。
同感です。アプローチがうまいからドライバーも振れるのだと言っていますが、初心者のころからフルショット、パット、アプローチの練習をするアメリカと、パーオン率が70%くらいになっても、まだアプローチの大切さを気にしない日本のゴルファーとの差が今のゴルフレベルを物語っています。
松山選手は、世界レベルの選手でありながら、うまい選手との試合の中で自分の技術不足を実感している。それが彼を練習に駆り立てる。まさに志高く、自分のゴルフを世界レベルの中で一流と思えるかどうか…。そのことしっかり考えられるからこそ、今の松山選手があるのです。
先日、サンディエゴに、日本のプロテストを受けるために強化合宿にやってきた男子生徒。こちらで、ローカルの試合も経験し、アプローチ、寄せの大切さを実感して戻りました。日本に戻り、寄せ、パンチショット、パットなどを中心に練習を重ねていますが「最近は試合でイーブンやアンダーが出るようになった!」と便りがありました。
アメリカ人の中で試合をし、寄せ、アプローチの上うまさに驚き、フルショットだけではコースマネジメントができないことが分かった合宿の大きな収穫でした。7月のプロテスト、合格を信じています。
野口彩未プロがどん尻から上昇していくためには、通常フルショットやパーオン率だけを気にしていては遠回り。レッスン初回から、アプローチ、パットを強化。50ヤード以内、100ヤード以内のショット。これだけで、結果は見えてきます。バンカーもまだまだ練習は足りないようですが。しばらく、結果に注目していきましょう!
(LPGAインストラクター・今井貞美)