「USアマ」の彼に(上)
残念ながら日本ではあまり報道されないUSアマ(全米アマ)は、世界で一番大きいアマチュア選手権であり、一番古くからある選手権です。世界、全米の予選を通過した320人前後の選手たちが、2日間2つのコースのストロークプレーで上位64人を通過者として、3日目からマッチプレー戦になります。この方式は、非常に妥当で、やはりストロークプレーも違うコースで2日間で実力が70%分かります。まぁ、たまたま調子の悪い日に当たることはあっても、それも含めてゴルフだと思います。
3日目から、64人のマッチプレーが始まり、これが面白い!マッチはその試合の時間内での勝負なので、世界ランキングが何位でも結果は順番通りにならない面白さ、これぞ勝負-というのがあります。実際、ランキングの上位の人があっさり負けてしまうことが多々あるのですから。
2013年8月。カリフォルニア予選を4アンダーで通過した絵野君と、第113回アマ本戦(ボストンのThe Country Club)に帯同した私は、この大会の素晴らしさと、この経験を通じて、お金では得られないゴルファーの宝物!(ちょっと大げさ?)を感じ取りました。
それ以来、日本にいる生徒に「アメリカに来て予選受けて、本戦まで狙いましょう!」と話をしているうちにそれは現実となりました。彼は大学ゴルフ部に行ってから、当然上達していくだろうと思っていましたので、3年弱、一切、見ていなかったのですが、どうもゴルフのレベルが横ばいで、これでは彼の将来は勝てない選手で終わると思い、本人と話し合い、指導再開を始めたところでした。7月半ばの予選に備え、2月から始めたスイング改造はまだ未完成ですが、それよりも日本での練習の細かい指導が必要なことが分かりました。
3番ウッドのティーショット、短いアイアンの方向性重視の徹底的な打ち込み、それの具体的な方法を説明し、パットは90~120センチの傾斜を含むカップ周りからのピン中狙いのストローク、6メートルをショートしないパットの練習、多種バンカーショット、グリーンサイドのチップアンドランの猛練習(100%でチップインあるいは1パット)。
カリフォルニアでの予選は、1日で36ホールのストロークプレーで「36ホールの試合をしたことがない!」という本人に、こちらは「たくさん食べて寝なさい!」と言う程度。
事前にネットでコースを調べて彼に知らせ、パー3の使用クラブ、コースレイアウトを見ながら予想できるコースマネジメント、それに必要な、パンチショットや木立からの脱出の技などの示唆をして練習を絞りました。
実際、短期間でのフルスイングの完成などはほとんどあり得ないので、方向さえ良ければ良しとしましょう「大丈夫!」というのが、試合前の大切な一言です。
私の予想では短いコースなので「たぶん68、68の136で合格かな」と本人には伝えておきました。それが、第1ラウンド7アンダーでトップ、久しぶりの65。これは本当に久しぶりの数字なので、全く気は抜けない。後半のスコアが夕方やっと出て1アンダー、トータル8アンダーで上位3人、8アンダーが通過ラインでした。冷や汗…。
「7アンダー、その後1アンダーはどうしたの?」と聞くと「7アンダーなので、2アンダーくらいで大丈夫かな。だから、無理はしないでいいかなと…。通過できるから」という答え。“これが、近年の貴方の上手くもない、下手でもない、ぬるま湯、勝てないゴルフなのよ!”という私の思い。
現実に通過者の2人は第2ラウンドを6アンダー、5アンダーできました、これがアメリカのアマゴルフです。ジュニアたちもバンバン、バーディーを取ります。このくらいで良いなどと思っている限り、勝てる選手にはなれない!それを貴方は、今回しっかり学びましたよね。
結果、第115回全米アマ選手権出場権を獲得し、彼はシカゴのオリンピアフィールドで大会に参加することになりました。(LPGAインストラクター・今井貞美)