「バブル期の憧れ」大阪の名物ホテルはなぜ閉館するのか?「ホテルで接待」は減少…コロナ禍を経て変わった価値観
惜しくも2025年10月に閉館し、40年の歴史に幕を閉じる「ANAクラウンプラザホテル大阪」(大阪市北区)。閉館の理由について、SNSを中心に「老朽化」や「再開発」が噂されるが、真相はどうなのか? ホテルの開業準備室に入社以来、40年以上勤務する広報の木下智子さんに話を伺った。
1984年10月に開業し、「大阪全日空ホテル・シェラトン」、「大阪全日空ホテル」の名称を経て、2008年に現在の「ANAクラウンプラザホテル大阪」としてリニューアルオープンした同ホテル。大阪屈指のビジネス街・淀屋橋や堂島が近いため、国内外の宿泊客のほか、周辺のビジネスパーソンの打ち合せや接待の場としても重宝されてきた。
■ 閉館の理由は?──なぜ閉館されるのでしょうか?
ホテルのビルを所有している「ダイビル」との定期建物賃貸借契約の満了によるものです。ホテル閉館後、ダイビルさんが建物をどのようにされるのか、私たちは聞いていないんですよね。一因として、老朽化もあるかもしれないし、お客さまも老朽化を噂されますが、基本としては賃貸借契約の満了です。
■ 老舗ホテルの老朽化 VS 新ホテル2025年4月開業の「ウォルドーフ・アストリア大阪」など、梅田では再開発が進むうめきたエリアを中心に、ホテルが新規開業ラッシュ。一方で、「大阪新阪急ホテル」(2025年1月閉館)や、大阪マルビルの「大阪第一ホテル」(2023年3月閉館)など、昭和から親しまれ、「バブル期」を乗り越えてきた老舗ホテルの閉館が相次ぐ。
──近年のホテルの閉館についてはどのように思われますか?
時代の流れかな、と思います。新しいホテルは、設備が化粧室ひとつとっても違うでしょ? 40年、50年経つホテルは、老朽化を補うために、倍頑張らないと戦えない。古いものを大事にすることも大切だけれど、これだけ新しいホテルができると、新しくしたくなりますよね。
今はホテルもレストランもたくさんあるので競争が激しく、個性的でないと目立つことができません。例えば、ビュッフェにしても、ブランドに加えて、何か特徴がないと選んでもらえない時代。美味しいだけでもダメで、写真映えするスポットもいる。競争に勝つためには、新しくするしかないのかもしれません。
■ コロナ禍を経て変わった、ホテルへの価値観──うめきたにオフィスを移転する会社も多いようです。堂島からの人の流れの変化は感じますか?
人の流れの変化は感じませんが、コロナ禍を経て、接待が少なくなってきていると思います。最近の若い人は飲みに行かないと言うじゃないですか。
東京に本社が移ったり、リモートワークが導入されたりして、メインのお客さまである、ホテル周辺の会社で働く人たちの価値観が、変わってきているように思います。その方たちにとっての「普通」が、ホテルで接待することじゃないというか。「ホテルじゃないと」っていうニーズが変わってきていますね。
──今はどのようなニーズに変わっていますか?
北新地にあるため、もともとは「大人が集う」ホテルというのが魅力でした。平日はビジネスマンが来られて、夜は接待で使ってくださっていて。しかし、土日になるとがらんとしていることが課題でした。
より多くのお客さまにアプローチすべく、ピンク色のスイーツや装飾を施した「ピンクアフタヌーンティー」や「デザート&ランチブッフェ」を5年ほど前から始めたことで、女性のお客さまにもたくさん来ていただけるようになりましたね。
今開催中のいちごビュッフェは、いちごスイーツだけでなく、カレーをはじめとした料理もおいしい。昔から「味の全日空」として選ばれてきたので、自信があります。
◇
「ダイビル」(本社:大阪市北区)に、閉館後の建物についてたずねると、「まだ何も決まっておらず検討中」とのこと。「ANAクラウンプラザホテル大阪」は、10月15日の宿泊利用(10月16日正午のチェックアウト)をもって閉館する。今後の詳細は随時公式サイトにて発表予定。
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(Lmaga.jp)
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