【野球】ようやく解き放たれた阪神・藤川監督の素顔 感情を爆発させたガッツポーズと絶叫
「巨人2-7阪神」(4日、東京ドーム)
ようやく素顔が見られた。そんな思いが去来してうれしくなった。2点リードの七回2死満塁から、阪神・木浪が左翼線に走者一掃の適時二塁打を放つと、三塁ベンチの藤川監督は「ヨッシャー!」と叫び、握り締めた右の拳を何度も振り下ろして感情を爆発させていた。
同点の三回に大山の中前適時打で勝ち越し、さらに坂本の左前適時打で追加点を奪い、相手エース戸郷をKOしていたが、四回からの3イニングを左腕・横川に抑えられていた。2点リードはキープしていたが、徐々に流れは相手ベンチに傾きかけていた。
次の1点をどちらが取るか。自軍が取れば勝利に近づき、相手が取れば一気に形勢は変わる。緊迫した局面が続く中、勝負の分岐点を制した。開幕から6試合、派手なアクションや感情を大きく表すことのなかった指揮官が初めて、自らの感情に偽ることなく、素の自分をさらけ出したように感じた。
藤川監督は現役時代から、中日・落合博満監督と交わりがあった。その落合氏は監督時代、「選手は常に監督の顔色を見ている。だから監督ってのは、よっぽどじゃない限り、感情を顔に出しちゃいけないんだ。もっと喜べなんてことを言われるけど、喜ぶのは優勝した時だけでいいんだよ」と常々語っていた。
そんな落合氏の薫陶も影響していたのか。監督就任から藤川監督の表情を気にして見ていたが、どこかオブラートに包まれたような、なにか見えない壁があるような、素の自分をさらけ出していない印象を強く受けていた。だから、このシーン、この表情、このアクションを見た時は、心の底からうれしさがこみ上げた。
SNSでも「球児監督めっちゃ興奮してる」「こういう表情が見たかったんだよね」「三塁ベンチ盛り上がってる。藤川監督ガッツポーズしてるやん」「これはチーム乗るよね」「こういう場面で感情出すのも監督の仕事だと思う」「こんな球児さんをずっと見ていたい」「これだよ、これ。俺が見たかった藤川監督は」といった反応が飛び交った。
試合後の勝利監督インタビュー。森下の先制犠飛には「元気でしたね」と語り、エンドランや盗塁を多用して戸郷を揺さぶってことについては「今日はなのか、今シーズン中なのか、この辺りはまた明日以降を見てもらいたいなと思います」と、いつもの藤川監督に戻っていた。感情を爆発させた七回の場面について聞かれても、自らのアクションに関しては明確に答えることはなかった。
それでいい。
落合監督はこうも言っていた。
「監督の言葉は誰がどこで見て、聞いてるか分からないからな。相手の監督や選手を無意味に刺激する必要はないよ」
藤川監督が落合氏を参考にしているのかは分からない。ファンの立場からすれば、喜怒哀楽をつぶさに表現し、コメントでも喜ばせてくれたらと思うのは当然。だけど、藤川監督はそうはしないだろう。時に、この日のように素の藤川球児をさらけ出したと思わせてくれるようなシーンがあれば、それでいい。(デイリースポーツ・鈴木健一)
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