【野球】消滅した近鉄最後の打者 本拠地最終戦ではサヨナラ打 歴代監督らOBからの「ありがとう」に感動

 近鉄時代を振り返った星野おさむ氏
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 熱狂的なファンに愛されてきた近鉄は2004年9月に55年の歴史に幕を閉じた。星野おさむさん(54)は本拠地最終戦となった西武戦でサヨナラ二塁打を放ち、球団史に名前を刻んだ。阪神、近鉄、楽天で17年の現役生活を送り、今年から独立リーグ・千葉スカイセイラーズのGMを務める星野さんが「一生残るような出来事があった」と表現する近鉄時代を振り返った。

  ◇  ◇

 近鉄が消滅してから昨年で20年が過ぎた。星野さんの脳裏には、今でも本拠地・大阪ドームでのラストゲームの光景が焼き付いている。

 2004年9月24日の西武戦、延長十一回一死二塁。星野さんの放った打球が右翼線を破ると、選手たちがベンチから跳ねるように飛び出してきた。劇的な本拠地最終戦でのサヨナラ二塁打。選手だけではない。監督、コーチ、球団スタッフ、4万8000人の超満員のスタンドが、かけがえのない瞬間を熱狂と涙で分かち合った。

 ナインに抱きつかれ涙した星野さんだったが、自分で決める気は毛頭なかった。むしろ、勝利のお膳立てをしようと打席に入っていたという。

 「たまたまヒットを打ったんですけど、何かやったろうっていう気はなくて。礒部が頑張ってたので、神様が最後に礒部に回すんじゃないかと思ってたんです」

 続く打者は球団合併を阻止しようと奮闘してきた選手会長の礒部公一外野手。野球の神様は、礒部会長が試合を決めるシナリオを用意したー。そう感じていた星野さんは、二死三塁と好機を広げることを考えていた。

 だが二度バントを試みるも連続ファウル。またたく間に追い込まれた。

 「相手は森(慎二)投手。すごいフォークを2球も続けて投げてきたんです。球場もどよめいて、なんや、打てよ、みたいな感じになったんです。ベンチは『あいつ、礒部に回す気だな』って気付いたみたいで。後ろでは礒部が打ってくださいって言っていて。梨田監督もいいんだよ、打てよ、みたいな感じで」

 気持ちを切り替え「なんとかセカンドゴロを打とう」と星野さんは必死にバットを振った。すると「いい角度で当たった」ライナー性の打球は、自分で予想もしなかった展開を呼び込んだ。

 関わったすべての人にとって特別な日だった。「岡本(伊三美)さんとか西本(幸雄)さんとか、近鉄のOBの方もたくさんいらっしゃっていて、みんなにありがとうと言われて、すごい感動したんです」

 迫る球団消滅の時を前に、それぞれが感傷的な気持ちを抱いていた。途中出場した星野さんもそうだった。

 「同点でずっと続いてたから、試合途中では、このメンバーで、十五回でも二十回でも続けばいいのにと思ってましたね。同じように考えてる人はいたはずです」

 13年間在籍した阪神から2001年に戦力外を言い渡され、テストで近鉄に入団。在籍したのは2002年からの3年間だった。

 「阪神で自分なりに一生懸命やって、結果がなかなか出なくて。向かい風に向かって一生懸命走ってる感じだったのが、大阪ドームに行って、普通にやれば結果が出るんだって感覚があったんです。30歳も越えてたんで、キャンプでも自分である程度メニューを組ませてもらって、すごい考えるようになって、若い選手のことが見えるようになったりしてました」

 そして言葉を続けた。

 「近鉄はあっという間の3年間だったんですけど、一生残るような出来事があったし、すごい有意義でしたね」

 移籍2年目には111試合に出場し、自己最多の89安打&51打点、打率・274とキャリアハイの成績を残した。

 星野さんは、くしくも、04年9月27日に、近鉄の合併相手であるオリックスの本拠地ヤフーBBで行われた最終戦でも最後の打者となっている。この試合は敗れたが「そういう巡り合わせなんだなと思いながら打席に立っていました」と振り返る。

 その年の11月8日。分配ドラフトが行われ、星野さんは新規参入球団となった楽天へ移籍した。

 「シーズン中は、どこに行くのか分からなかったし、それぞれで考え方も違う。チーム内がバタついたり、ばらばらになったりした時期もあったけど、最後は本当にいいチームだなって思いましたね。ああいう試合ができて、今となっては近鉄の中で、全員がいい思い出だと思うんじゃないですかね」

 猛牛軍団の一員として経験した本拠地での奇跡のようなフィナーレを懐かしんだ。

(デイリースポーツ・若林みどり)

 星野おさむ(ほしの・おさむ)1970年5月4日生まれ。埼玉県出身。埼玉・福岡高から88年にドラフト外で阪神入団。93年4月に1軍初出場。2001年に戦力外となりテストを経て02年に近鉄入団。04年の分配ドラフトで楽天移籍、05年限りで引退。実働13年で738試合、1537打数387安打、打率・252、24本塁打、155打点、27盗塁。06~10年まで楽天コーチ。11年から四国IL愛媛監督、BCリーグ武蔵監督、福島GMなどを歴任し、25年1月に独立リーグ千葉のGMに就任。

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