尻から空気注入で死亡…非常に危険な行為 ある意味“暴挙”
「町医者の独り言・第32回」
先日、空気圧縮機(エアコンプレッサー)を用いて、ズボンの上から肛門に空気を入れて会社の同僚を死に至らしめるという不幸な事件をニュースで見ました。調べてみると、昨年末にも似たような事件があったようです。おそらく死亡案件ではないから大きく扱われないだけで、このような行為は頻発しているのではと想像されます。
肛門から安易に液体、気体など注入することはくれぐれもしないで頂きたい。便秘などのために、よく行われている浣腸なども、注意をしないと状態によっては腸が破れてしまうケースだってあるのです。
肛門から急速に空気を注入すると腸管が勢いよく膨らみます。その結果、腸が破れてしまうことがあります。また、腸は破れなくても腸管が裂けてしまい、裂けた部位から空気が血管の中に入り空気塞栓を起こす可能性だってあります。
血管の中に空気が大量に入り込むことにより、脳、肺、心臓などの重要な血管がつまることがあるのです。最悪の場合は死に至ります。冒頭の痛ましい事件も死因は窒息でした。肛門から空気を入れられて内臓が損傷してしまい、漏れた空気が体内にたまって、最終的に肺を圧迫したのでしょう。以前、美容のために流行した高圧浣腸などでも痛ましいケースがあったと聞いています。
また、性的嗜好(しこう)から肛門に異物を入れて取れなくなり、来院される人もいます。私は、20cmのヘアームースの缶を取り出した経験があります。その時は、腸が破れずに済んでよかったのですが、破れていれば緊急手術となり生命に及んでしまう危険な行為でした。
繰り返しになりますが、このような行為は、非常に危険であるということを改めて理解して頂きたいと思います。以前、バラエティー番組でお尻からガスを入れて笑いをとるのを見たことがあります。それらを真似て悪ふざけで空気注入したのであれば、医師の立場からすると、とんでもない“暴挙”だと言わざるをえません。
液体や空気など、一見すると身体に大きな害がないように思えてしまうのかもしれませんが、通常の生活においてあり得ない行為をすることは本当に危険なのです。ほんの悪ふざけ、いたずらで多くの人の人生が変わってしまう可能性がある。そのことを忘れないでほしいと願います。
◆筆者プロフィール 谷光利昭(たにみつ・としあき)たにみつ内科院長。93年大阪医科大卒、外科医として三井記念病院、栃木県立がんセンターなどで勤務。06年に兵庫県伊丹市で「たにみつ内科」を開院。地域のホームドクターとして奮闘中。
関連ニュース
編集者のオススメ記事
医療コラム最新ニュース
もっとみる新型コロナを数字から見ると…我々の周囲にある病気の怖さに気付く
薬物依存症では取り巻く人の教育も大切 ある良書から得た学び
天龍源一郎の小脳梗塞…滑舌&しゃがれ声には関係なし?医師が説明
医学で説明できない不思議な治癒の例がある…解明できれば患者さんの“希望”に
痛風になりやすい夏 プリン体が含まれていない蒸留酒ならOK? 医師が説明
寝苦しい夜が増えてきて…「寝溜め」に効果はあるのか?医師が説明
10連休も病院で仕事 改元、インフルエンザ、凄惨な事件…ある町医者が思ったこと
萩原健一さん死去…10万人に1人か2人の「GIST」とは 医師が解説
ロッテ永野投手の「広場恐怖症」治療に認知行動療法、暴露療法など…医師が説明
堀ちえみさん舌がん公表 見分けにくい初期症状…口内炎、歯周病などと類似
阪神・原口選手が大腸がん 20代の罹患は珍しいが怖がらず内視鏡検査を
インフルエンザの新薬ゾフルーザ “現場”ではどうなのか…
闘病中のNosuke 精巣がんによる胚細胞腫瘍とは
若いタレントに相次ぐパニック障害…医師が語る“理解されない”心の病
ドラマ「大恋愛」は貴重なドラマ 若年性認知症の問題点とは