阪神・原口選手が大腸がん 20代の罹患は珍しいが怖がらず内視鏡検査を
「町医者の独り言=43=」
阪神の原口文仁選手が大腸癌(がん)であることを発表されました。年齢を聞いて、びっくりしました。26歳。この年齢での大腸癌の患者さんにあまり遭遇することがないからです。
食の欧米化などにより大腸癌の罹患率は年々、上昇傾向にあるとされています。女性では癌による死亡原因として大腸癌は1位になり、男性では肺癌、胃癌に次いで3位となっています。文献により頻度の差はありますが、年齢別の大腸癌の罹患率は39歳以下で欧米2~6%、日本は1・8~4・8%です。29歳以下になるとさらに減少し、欧米では0・86~2.1%、日本では1・2~2・2%と報告されています。数字だけをみると、かなり稀とまでは言えませんが、珍しいとは思います。
ちなみに私の26年間の医師生活で、20代の進行大腸癌の患者さんにお会いしたのは1人だけです。その患者さんは、大腸の検査を予約していましたが、腹痛が増悪したために緊急入院、緊急手術となりました。5年以上経過していますが、今もお元気に生活されていると聞いています。
大腸癌には遺伝する特殊なケースがありますが、ほとんどは遺伝しないです。進行してくれば様々な症状を認めますが、早期であればほとんど症状は認められません。大腸癌が肛門に近ければ、出血、便柱の狭小化、頻便などを認め、肛門から遠くなれば遠くなるほど、進行して大きくなるまで症状が出にくくなります。ですので症状が出現したときには、進行していることが多いのです。便潜血などの健診は積極的に受けて頂きたいです。
最近は大腸癌以外にも、潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患が若い世代に増えているので、大腸内視鏡の検査を積極的に受けて頂くことが最良だと思われます。大腸癌でも早期であれば内視鏡切除のみで治療が終了することも多いのです。
進行度にもよりますが、最近は進行癌でも多くの場合、腹腔鏡を使った手術が行われ患者さんにできるだけ侵襲が少ないように様々な工夫がなされています。大腸癌は早期であれば、悪性度が比較的低い癌であるとされ、予後も良好です。その為には、早期発見、早期治療が大変重要になってきます。
「大腸内視鏡の検査が大変でイヤだ」と多くの患者さんがおっしゃいます。最近は技術の向上もあり以前よりも比較的楽に検査できるようになっています。当院では、肛門から大腸の一番奥に到達するのに、おおむね3~5分しかかかりません。気になる症状や便潜血が陽性であれば、ぜひ怖がらずに大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。
最後になりますが、原口選手の早期回復と1日でも早く元気なお姿での活躍を見られることをファンのみなさまと同様に祈っております。
◆筆者プロフィール 谷光利昭(たにみつ・としあき)たにみつ内科院長。93年大阪医科大卒、外科医として三井記念病院、栃木県立がんセンターなどで勤務。06年に兵庫県伊丹市で「たにみつ内科」を開院。地域のホームドクターとして奮闘中。