インフルエンザの新薬ゾフルーザ “現場”ではどうなのか…
「町医者の独り言=42=」
インフルエンザが猛威をふるっています。現場で診察をしていても、本当に猛烈な勢いで拡散している印象です。記事を読まれている多くの方が罹患されている、または、お知り合いが罹患したのではないでしょうか。
しかし、昨年までと違うことが一つあります。新薬の出現です。これまでのインフルエンザの薬は内服はタミフルのみで、吸入はリレンザ、イナビルといった薬が使用されていました。中でも重宝されていたのが、イナビルだと思います。1回の吸入だけで治療が完遂するからです。ただ、欠点もあります。その吸入がうまく行えなかった場合、期待通りの治療効果が出ないことです。吸入後にせき込んだり、吸う力が弱いために、うまく吸えないなどの呼吸障害がある患者さんには使いにくい薬でした。そういった患者さんで、重症の患者さんにはラピアクタという点滴のお薬を使ったりします。
今までのインフルエンザの薬は、増殖したウィルスが細胞から飛び出していこうとするのを防ぐ薬でした。簡単にいうと細胞にウィルスを閉じ込めてウィルスの増殖を抑えていました。今回の新薬である「ゾフルーザ」は、ウィルス細胞の増殖そのものを押さえ込む作用で治療に導く薬なのです。他の薬で効果に乏しい、いわゆる薬剤耐性インフルエンザウィルスに対しても治療の効果が期待されています。
そして、1回の内服で治療が終わるために飲み忘れの心配がありません。内服という形で投与されるために確実に体内に薬を取り込めます。投与量は、年齢、体重によって決められています。未成年の使用については、この薬も48時間の監視が必要とされます。
ただ、治療の途中、ウィルス内において、アミノ酸の変異が起こりやすいともされています。分かりやすく言うとウィルスが変わってしまい、新薬の治療効果が乏しくなるということですが、それが患者さんにとってどれほど不利益をもたらすかは、今後の経過を慎重に見て行く事が必要とされています。
私が投薬している印象では、新薬ゾフルーザを投与したことにより患者さんに明らかな不利益がもたらされたと言う例は、今これを書いているところまではありません。引き続き、状況を確認しながら適切な投薬を心がけたいと思います。
◆筆者プロフィール 谷光利昭(たにみつ・としあき)たにみつ内科院長。93年大阪医科大卒、外科医として三井記念病院、栃木県立がんセンターなどで勤務。06年に兵庫県伊丹市で「たにみつ内科」を開院。地域のホームドクターとして奮闘中。