フジテレビだけ叩くのか
【1月28日】
芦屋創業の洋菓子店で待ち合わせ、その後、芦屋で人気の蕎麦屋で昼メシをご馳走になった。相手は…82歳の元デイリースポーツ幹部。年に一度か二度この人と会っていろんな話をする。
前回の約束は家庭の事情でドタキャンしてしまったけれど、今回は新年の挨拶とキャンプ前の景気づけに…。
「去年は原稿に遠慮が見えたな。遠慮したらあかん。あんたの欄やから」
年始から叱られた。
デイリー入社以来、30年の付き合いになるこの人は恩師であり恩人。記者とは何たるかをいつも教わってきた。
「ええ子ちゃんは記者には向かん」
コンプラが盾になる今のご時世、この人のそんな見識は通用しなくなってきたかもしれないが、いわんとすることはこの先ずっと共感できると思う。
言われたことを時間内にいかに正確にやれるか-これがスポーツ紙記者の「最優先のモノサシ」になれば、紙面から遊び心が消えていく。かといって奔放な記者ばかりでは…。力は様々。双方に必ず求められるメディア人間の資質とは何か。
きのう、例のフジテレビの会見を取材したという週刊誌のライターから連絡があった。聞けば、会見が日をまたいだのでお台場まで押し寄せたものの終電で帰った記者も結構いたという。
「途中グダグダになりましたけど、僕は最後まで居てタクシーで帰りましたよ。帰宅は朝方でしたけど」
まあ、あなたは退席せんやろな…。
この記者はフリーランスで、知り合ったのは10年ほど前。いきなり同業者を介して電話がかかってきた。
「周りで野球賭博している新聞記者をご存じではないですか?」
当時、球界でちょっと問題になったネタだが、彼は何かを「掴んでいる」とかで、ねちっこく聞き込みをしていたし、実は、その件でもまだ取材を続けているそうだ。週刊誌はこわい。私見だが、良くも悪くも遠慮がないという意味でそう感じる。ちなみに、そのライターは組織がイヤで新聞社を辞めた人間で、正義感を持っていれば筆に「遠慮なんて要らない」そうだ。
僕もできるだけフジテレビの会見を見るようにした。中居正広の女性とのトラブルに端を発し、フジテレビのコーポレートガバナンス、内部統制が問われている今回の問題。当該女性の心身のケアを最優先にしなければならないのは大前提だが、ぶっちゃけ、企業風土が一度や二度の会見で簡単に変わるものではないことは、きっと、みんな分かっているし、そもそも、この類の体質改善を求められるのは果たしてフジテレビだけなのか。こぞってフジを糾弾しているメディアは胸を張って「ウチの社員はすべてクリーンだ」と誓えるのだろうか。
デイリーの元幹部とランチした後、阪神の主力選手と球場外で会った。
「キャンプ頑張って!厳しい目で見とくわ」と伝えると、その選手は「よろしくお願いします」と言った。取材者として傲慢にならず、しかし、遠慮せず…。心新たに球春を迎えたい。=敬称略=
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