木浪が4時50分に起きた理由
【2月28日】
「早起きは三文の徳」。そんな諺がある。健康のために早朝ウオーキングを続けた沖縄キャンプ、取材者としては「得」をしたのかもしれない。取材された当人は驚いただろうけど…。
The early bird catches the worm-。 英語ではこういう。直訳すれば「早起きの小鳥は虫を捕まえやすい」だけど、あの朝は鳥もまだ鳴かなかった。
4時30分。いつもより早く目覚めたので恩納村のホテルから歩く距離を伸ばしたのだが、夜明け前の霧雨と風で視界が…。そんな中、フォレストグリーンのパーカをすっぽりかぶった男が国道58号を読谷方面へ走っていた。
木浪聖也である。
あっ!と思えばスマホででも撮ってしまうのは記者のサガだけど、報道写真としては失格。ランニングの風情は何とか…。でも、誰か分からん。暗闇だし、霧が掛かっているし…。
何時に起きてるの?
「4時50分です」
毎朝?
「そうですよ」
木浪といえば「朝のルーティン」。そんな印象だけど、今キャンプも人知れず続けていた。阪神の宿舎から読谷方面へ片道2・5キロを酷い荒天を除いて毎朝。昨年までは宿舎から名護方面へ走っていたが、外灯が少なく足元が危ないので走路を変え、今年は5キロ×20日。計100キロを「完走」した。
「だいたい5キロくらい走ればちょうどいい汗が出るし、朝ご飯をしっかり食べられるので…」
室内練習場が併設されたかつての宿舎では「早朝打撃」が日課。新宿舎では「早朝ラン」。ストイックだ…。
「やろうと決めたので。体をしっかり動かすこと、朝食を十分取ること。ご飯をしっかり食べないと、キャンプは長いので。体調は少し崩れるだけで練習に集中できないですし…。早く寝て早く起きる。栄養を取る。それを続ければ体調が崩れることはないので」
オフのトレーニングで上半身も下半身も益々隆起する。若い。顔も、カラダも、おそらく血管や内臓も…。
クールなマスクに似合わず負けん気の塊だ。「必要なのは力」。指揮官・藤川球児が就任会見で発したこの激励に木浪は感謝しているに違いない。
まだ30歳。今から脂が乗る。必ず乗せる。そんな気概で迎えた25年。背番号0はあらためて「継続の力」を信じ、再スタートを切った。
遊撃のレギュラー争いはこの先も続く。同じ成績なら若い力が重宝される世界。昨秋、小幡竜平を初めてじっくり取材させてもらったけれど、肝が据わっているし、芯の強さも感じる。木浪と小幡がほかの「候補」を寄せ付けなかった沖縄の春。打ち上げ日のラストメニューとなったシートノックでは洗練された遊撃の両雄が内野の空気を引き締めていた。今年初の対外試合、その第1打席で本塁打を放った木浪は言う。「あれで少し楽になった?いや逆ですよ」。寒気が去った沖縄を後にした2・28。高め合った気骨、その先の景色を楽しみにしたい。=敬称略=
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