もしヘルシーな球児なら

 【3月13日】

 ドジャースが来日した。厳戒態勢の羽田空港に到着した銀河系軍団はキラキラと輝き…。その中心に日本人が3人もいるなんて筆者がこの世界に入った30年前は考えられなかった。

 野茂英雄が海を渡った1995年にデイリースポーツに入社した。ド軍のルーキーNOMOがその年の5月に初登板すると、僕は阪急梅田駅の大型ビジョン「ビッグマン」前へ。パイオニアのメジャーデビューを報じるニュース映像を立ち見する街の人々を取材…もう、あれから30年かぁ~なんて感傷に浸りながらこれを書いている。

 きのうは日本球界の「投高打低」について書いた。投打「二刀」ともスーパーマンの大谷翔平を目の前にすれば何も書けなくなるのだけど、それはそれとして続きを記す。

 トラックマン、ホークアイ、ラプソード…計測器が一般装備されるようになった今の時代、平均球速は上がり、球種も増えた。投手の進化に打者がまだ追い付かないのか…等々、現場のコーチやOBの間でも様々な見方がある。

 埼玉西武球団本部プロ担当チーフスカウトの嶋重宣に聞けば「仮に、数字ばかり気にして打者がみんな同じ軌道のスイングを目指せば投手は抑えやすくなるのでは?」と個人見解…きのうそんな話に触れた。嶋は続ける。

 「比較的、野手は数字を気にし過ぎると難しい場合もあるかもしれませんね。生身の人間が生身の人間が投げたボールをどう捉えるかというものを自分の体の使い方と照らし合わせて考えることも大事ですし…。みんなが同じようなスイングを目指せば個性的なバッターが少なくなりますよね。みんなが似かよったタイプの軌道になればピッチャーは攻めやすくなるのでは…」

 嶋は身近な投手の目線を「取材」したうえで、そんなふうに話した。

 セ・リーグ=2人。

 パ・リーグ=1人。

 これは24年の3割打者の数である。

 ①T・オースティン(・316)②D・サンタナ(・315)③近藤健介(・314)…この3人しか大台に届かなかった。ちなみに10年前の14年シーズンはセ・パの3割打者は19人。M・マートンが首位打者を獲った同年のセ・リーグは12位までが3割だった。

 そんな話をしていると、嶋がおもむろに言った。

 「藤川球児という投手はやっぱり凄かったですよ」

 「打低」といわれない時代に防御率0点台、1点台をたたき出したことにあらためて敬服していた。

 「投高打低」の一つのファクターとして嶋は「昔と今の違いでいえば、今は投手が比較的ヘルシーな状態で投げられていること。例えば、中継ぎ、抑えは3連投以上はしなくなった。もちろんいいことですけど、打者はヘルシーな投手と対戦すれば…」と語る。

 07年の「藤川球児の10連投」を目の前で見た僕は思う。「もし球児が今の時代にヘルシーな状態で投げ続ければ…」。そんな仮説もまたおもしろい。この話、尽きないのでまた近いうちに続きを書きたい。=敬称略=

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