【野球】オリックス・宇田川 大谷翔平&ダルビッシュを追いかけない理由 「描いたとおりに来られていない」WBC以降の苦悩も吐露
日の丸を背負った後の野球人生は決して順風満帆には進んでいなかった。ボールを投げずに終えたB組でのキャンプ4日目。2023年WBC日本代表に選出されたオリックス・宇田川優希投手(26)は本当の“プロの世界”をまだ経験していないという。
「1年間投げ抜いたときにプロの世界ってこうなのかと感じることができると思う。まだまるまる1年間1軍で投げきれていないので」。20年に育成ドラフト3位で入団し、22年7月に支配下昇格。19試合で防御率0・81をマークして翌年3月のWBC日本代表に選出された。
1年足らずで一気に育成から日本代表と、シンデレラストーリーを描いた右腕。23年シーズンは46試合に登板して防御率1・77と飛躍の年としたものの、昨季は右肩と肘の故障の影響によって登板はわずか13試合に終わった。
いまだに1軍フル帯同の経験はない。ブレークからWBC世界一となり、一流への階段を上っていく当時のビジョンと今の現実はかけ離れていた。「できるとは思ってたんですけどやっぱり難しい部分があった。まだ描いていた通りにはこられていない」。思い通りではない現状に歯がゆさを感じていた。
米大リーグのドジャース・大谷翔平やパドレス・ダルビッシュ有と過ごした侍ジャパンでの時間は今もかけがえのないもの。それでも、宇田川は投手として憧れる2人の言葉をうのみにはしなかったという。「自分の投げ方は特殊で。そういうのはあんまり聞かないようにしました」。リリースポイントが高い宇田川にとって、大谷やダルビッシュが投げるスイーパーなどの横に鋭く曲げる変化球は、肘が下がりやすくなってフォームを崩す要因の一つになると分析。「投げたいなと思うんですけどまねしないように」とあえて変化球の教えからは距離を取っていたという。
「まねしても技術面とかは無理なので。大谷さんでもダルさんでもその人達のやり方がある」。スーパースターと同じユニホームを着たからといって無理に背伸びはしない。世界一になってから約2年。まだ1年間1軍で投げきれていないという現実にも謙虚に向き合えている。
昨年9月の右肘浅指屈筋の筋損傷後、すでにブルペン入りも果たしており、リハビリは順調。次クールからはさらに練習の強度を上げて復活にまた一歩前進する。次のWBCは2026年3月。「理想はそこを目指すよりも日本一、自分が1年間投げ抜いていい成績を残して選んでもらえたらうれしい」。シーズンでの活躍を経て、もう一度日の丸のユニホームに袖を通す。(デイリースポーツ・北村孝紀)